SIAの今井です。 社会的インパクト評価の第十弾です。 企業のCSR・IR・経営企画部でも、いかに非財務領域をマネジメントしていくか? という文脈の中で、ESGやサステナビリティーの領域は注目を集めています。 社会的な価値やインパクトをどのように測定し、マネジメントしていくべきか。 基礎的な考え方や具体的な手法などを紹介する、コラムとなります。 ※こんなテーマも取り上げて欲しいなどありましたら、そうしたご連絡もお気軽にどうぞ。 まだ、過去の記事を読んでいない方はこちらを是非チェックしてみてください。 ・【第一話】企業の社会的インパクトを如何に測定し公開していくべきか? ・【第二話】社会的インパクト評価と実施するための重要概念 ・【第三話】社会的インパクト測定における対象範囲と波及効果の論点は? ・【第四話】社会的インパクトマネジメントとリーンな評価 ・【第五話】企業の取り組みの社会性の測定方法~With Without~ ・【第六話】社会的インパクト測定における主要な考慮事項 ・【第七話】インパクト評価に登場するRCTの意義と注意点 ・【第八話】社会的インパクト評価におけるSROIとは? ・【第九話】SROIの具体的な測定方法とロジックモデルとは? 今日のテーマはSROIです。 前回、SROIの計算式は下記とした上で。 「総便益/総費用」 = SROI ・アウトカムを総便益として考えるために、プロジェクトの社会性を代替変数を用いて、貨幣換算する必要がある ということを、蚊帳の事例で紹介しました。 ではこれがどういうことかを、もう少し具体的に解説していければと思います。
今回は蚊帳の事例ではなく、地域活性化や街づくりをテーマに考えてみましょう。 インプット(総費用)の部分は、各種施設や参画する人件費などが代表的なものとなるでしょう。 そして仮にアウトカムが、「住民満足度の向上」だとしましょう。 ※設定するアウトカムは当然、実施するプロジェクトによって変わってきます。 問題なのは、では住民満足度の便益とはなにか?という疑問です。 分母の総費用の部分が●●円というお金の単位になっている以上、住民満足度の部分も、円(金銭)単位でないと、SROIを求めることはできませんよね。 そうした際に、例えば、「住民満足度の●●%の向上は、住宅価値でいうと■■%の向上」という相関関係があると分かったとしましょう。 その場合、アウトカムを住民満足度ではなく、一定の割合を乗じた、住宅価格というような形で、(金銭換算可能な)代替変数を活用することで、数字を求めるのがSROIの手法となります。 もちろん色々と突っ込みどころがありますよね。 ・適切な代替変数が見つからなかったらどうるの? ・例え、住民満足度の代替変数として地価を活用しようとしても、住民満足度と地価の関係性をいかに算出するか? 特定の地域?似たような地域の事例?平均値?などなど SROIは金銭単位で表示されるため、他の活動との横並びでの評価やマネジメントがしやすい。また、比較的容易に測定できるなどもメリットもありますが、厳密性という観点では課題もある手法といえるでしょう。 ここは厳密性と実行簡易性は、トレードオフの関係にあるという話は、以前取り上げたかと思いますが、プロジェクトの性質により使い分けることが求められます。 今回の話を纏めると下記となります ・SROIは、代替変数を用いることで、社会的インパクトを金銭単位で可視化する手法 ・メリットがある一方で、RCTなどと比較するとそのエビデンスレベルは低い
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